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  • Noema Noesis

最高な野球ギャグマンガ

皆さんのお気に入りの本はなんですか?

私のお気に入りは野球ギャグマンガ、「Mr. FULLSWING」(以下、ミスフル)です。

 ミスフルは、埼玉県の十二支(じゅうにし)高校を舞台に、主人公の猿野天国(あまくに)とその仲間達の成長と甲子園への道のりをギャグ交じりに描く野球青春劇。その個性溢れすぎるキャラクター達は、個性のるつぼと化したのえのえメンバーみたいにハチャメチャ。ストーリーが進むと各々、人間離れした特殊能力とか物理法則を超えた必殺技を習得し、発動しまくります。中二病真っ盛りだった私は「夢あるなぁ」とすこぶる感化され、ファンタジーかつ豪快な野球描写に胸が躍ったのでした。そんなわけで作者の鈴木信也さんの技量には感服したわけですが、ミスフルにはさらなる「魅力」があるのです。


 その魅力とは、野球そっちのけで繰り広げられるサイコーなギャグたちです。作中におけるギャグと真面目な場面の比率は8:2、いや9:1と言っても過言ではない…。そして、何よりもこのギャグのどれもが、あまりにも低俗なのです。野球を題材にしながらも、試合中にベンチはおろかグラウンドでもユニフォームを脱いでしまうのです。いわゆる、野球の神聖さという観念を取り除いたようなサイコーな爽快さが広がっている世界。9回裏2アウトで負けている場面でも主人公はふざけ倒しました。週刊マンガですからおよそ3週間程度はふざけ続けたのではないでしょうか。文字通りの緊張と弛緩、厳しい場面にこそ笑いを取りにいく精神が醍醐味だと言えます。劇的な逆転打でゲームセットを迎えたその後も、再びギャグの応酬が始まるのでした。この後も好きなのか貶しているのか分からない文章が続きます。

 ミスフルのもう一つの魅力はネタと感動のバランスです。前述した8:2の比率はミスフルにおける黄金比だとも言えます。野球を舞台にして、数々飛び出してくる往年のパロディネタ。そして、必殺技や特殊能力が格闘シーンのような大胆な描写に表現されています。通常、爽やかさや友情、あるいは男臭さを辿り続けていくようなスポーツマンガの王道的展開に対して、全力のパロギャグ数百ページの先に待ち構える勝利の瞬間と名言の描写。つまり、「おびただしい数のサイコーに低俗な笑い⇒勝利の感動という一瞬」という流れによって、ずっと緊張しながら読むような他の野球マンガよりも感情の振れ幅が極大を迎えるのです。ギャグを散りばめるのではなく、常に笑いに完全燃焼していくことで感動が引出されるという絶妙なバランスが構築されています。

 ここからは余談。実は私の妻もこのミスフルが好きなんです。合唱で出会った妻ですが付合いたての頃は、二人でミスフルのギャグの再現に勤しんだものです。今でも、会話のネタになるくらい、強烈な記憶として残っています。本当に本の影響とは恐ろしいものですね。

Mr. FULLSWING、そして作者の鈴木さん。私たちに最高な家庭をありがとう。


文責:宮本賢(流れるような鼻濁音)

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