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  • Noema Noesis

ポエム書きました

ポエムを書きます!


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― 随分長く登り続けてきた。似たような岩壁が連なる山道。照りつける太陽に、額から汗が滴り落ちる。

曲がりくねった坂道を登りきったとき、眼前に大海の景色が広がり、私は息を飲んだ。

その時。

いつから付いてきたのだろう、1匹の蜆蝶(しじみちょう)が私の脇をひらりと追い抜かし、その先へ、

青空へと小さくなっていった。

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もうひとつ書きます!



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少し蒸し暑さを感じる季節になると、夕刻、私は杉下駄を履いて大好きな銭湯へと赴く。

素足に木の感触がたまらない。コツコツと鳴り響く音色に、腕の中でコトコトと音を立てる石鹸が応える。

毎日のこの時間に私は心躍らせるのだ。

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突然のお目汚し、大変失礼しました。

早々に種明かしさせていただくと、とある2つの俳句を通して自分が思い描いたものを文章にしてみたものになります。

どんな俳句でしょうか?もしよければ少し考えてみてからスクロールしてください。

↓↓↓






















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海見ゆるまで山登りゆき蜆蝶(しじみちょう)

兼松正直

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素足すき杉下駄が好き銭湯も

坂本祥子

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いかがでしょうか。

私の拙い散文などよりも、これらの1句からのほうが色々な景色や情感が伝わってくるのではないでしょうか?

(ポエムの意味…)


これらの句は「NHK俳句」の4月(兼題: 蝶)、5月(兼題: 素足)の入選句から引用させていただきました。

昼過ぎにTVをつけていたらたまたま番組を目にして、次々と読み上げられる秀逸な入選句や、なるほどと唸らせる選者の方の講評が面白く、見入ってしまいました。

それ以来テキストを買って鑑賞にいそんしんでいます。


ここで蛇足かもしれませんが、個人的な鑑賞の感想を。


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「蜆蝶」の句は「海」「山」「蝶」というサイズの異なるものを並べていることで自然とスケールの大きな情景が頭に浮かんできます。

景色のみを語ることで、なぜこの人は山に登っているのだろう、といった疑問も自然に湧いてきます。

「山登りゆき」と動詞が連用形になっていることでダイナミクスが生じて、主役である「蜆蝶」へ向けて筆者の視線が移るさま、さらには蝶が飛んでいくその先まで想像が掻き立てられました。

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「素足」の句は「さ行」の言葉が並んでいて、口に出して読んでみたくなります。

このリズム感から足取り軽く歩いている様子が浮かんできて、読んで気持ちが明るくなる句でした。

余談ですが、読み手が集まって互いの句を発表し合う「句会」では句を書くこと、読み上げることをどちらも重要視しているようです(テキストの受け売り)。

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限られた字数の中で言葉遣いを選びぬいて、読み手に多くの情景や感情を伝える工夫を目にすると、うまい!と思わずにはいられません。

また、鑑賞を通して季語の季節感を味わったり、普段あまり使わないような言葉にふれたりすることで、自分の中の世界が少し広がったような心地になります。


さて、ここまで書きすすめたところで、似たようなコンテンツ(?)をネットの海で見たことがあるような記憶が蘇ってきました。

これでした→


☆☆☆☆☆☆

デイリーポータルZ 書き出し小説大賞

https://dailyportalz.jp/kiji/kakidashi198

―書き出し小説とは、書き出しだけで成立したきわめてミニマムな小説スタイルである。

書き出し小説大賞では、この新しい文学を広く世に普及させるべく、諸君からの作品を随時募集し、その秀作を紹介してゆく。

☆☆☆☆☆☆


小説の書き出し(ふうの単文)だけで作品のテーマや世界観、その先の展開を思わせるような言葉選びは、俳句のそれと共通するものがあるのではないでしょうか。



話がそれてしまいましたが、最後にもう少し今の季節に合わせたものを紹介させていただきます(初秋の句なので少し遅れてしまいますが)。

みなさまはどのように味わわれるでしょうか。



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供花(くげ)のなき墓にひぐらし惜しみなく

陌間みどり

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(NHK俳句8月[兼題: 蜩]の入選句より)



文:豊岡(とっよ)

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