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アレンジメント

  • Noema Noesis
  • 2020年7月24日
  • 読了時間: 3分

 音楽を嗜む人なら身近に目にする言葉です。音楽では編曲の意として用います。民謡の編曲やポピュラー音楽の編曲、ジャズのコードとリズムに変えてジャズアレンジなんて言いますね。ぱっとしない人はJ-POPのカバーリングなども大きな意味で含まれます。割と現代のイメージが強いかもしれませんが、アレンジメントの影はクラシックの世界にもあるのです。

 その中でも本日は、私が以前から好んで聞いているF.リスト(1811-1886)の編曲作品群について紹介します。彼は数百もの編曲作品を残していますが、それらはスタイルによって大きく2つに分類されます。非常にざっくりと説明すると、

〇トランスクリプション

華麗な装飾などを施した自由度のあるアレンジにしたもの

中でも自由度が強いものをパラフレーズという

〇ピアノスコア

自由度を極力排除して原曲に忠実にアレンジしたもの

(現代では自由度の高いものをパラフレーズ、原曲に忠実なものをトランスクリプションというそうです…)

 どちらも面白いのですが、私は自由度の高いトランスクリプションを好んで聞きます。きっかけはネットでF.シューベルトについて調べ漁っていた際に「Liszt-Schubert-Winterreise」や「Liszt-Schubert-Die Forelle」などという不思議な単語列が目に留まったことに始まります。「へえ、リストも《冬の旅》や《鱒》の歌曲を書いてるんだ」と(Schubertの文字無視&そんなわけないのだが)、好奇心でとりあえず再生時間の短い《鱒》の動画を開いてみると、流れたのは聞いたことのあるような音楽でした。自分の知っているシューベルトの《鱒》に限りなく近いが、ピアノ独奏で、なんだかいろいろ付いて派手になっている…。とりあえず初めて聞いたときは、ちょっとしたビックリ編曲を聞いた時のように笑いました。

 後日、たまたま大学の授業でトランスクリプションに関する話題が出て、納得しました。リストは編曲作品も多く残したことは音楽史の文献でよく目にしていましたが、まさかあの斬新なシューベルトっぽいものがそれだったなんて。当時私の抱いていた1800年代のイメージには無く、クラシック音楽に対する認識は変化させられました。簡素なシューベルトと繊細なリストが見事に共存しているだけでも驚くべきことなのに、リストの施した「そこまでやるか」と思わせるほどのアレンジは原曲を知っていれば知っているほど楽しむことができます。

 「Die Forelle(鱒)」や「Die Schöne Müllerin(美しき水車小屋の娘)」あたりがわかりやすく斬新で面白いです。クラシックがあまりわからなくても、音楽の授業でおなじみの「Erlkönig(魔王)」もあります(ただでさえ重い曲なのに大変なことになっています)。また、シューベルト以外にもモーツァルトの合唱「Ave verum corpus」やメンデルゾーン「Hochzeitsmarsch und Elfenreigen(結婚行進曲と妖精の踊り)」など皆さんがきっと一度は耳にしたことがあるでしょう曲も多く編曲されています。中にはクスリと笑ってしまうものも…。本当に楽しめるのでぜひ原曲と併せて触れてみてください。


文:西角(ゆるふわベース)

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