最近、タイ語の勉強を始めた。
- Noema Noesis
- 2020年8月21日
- 読了時間: 4分
更新日:2020年8月22日
日本語と英語は話せるが、その他にもこれまでにドイツ語・中国語・バスク語をかじってきた。
大学院の研究では古英語・古ノルド語などの古い言語も取り扱ってきた。要は言語オタクである。全く話せないが。
いまアイスランド語をゆるゆる勉強しているが、そこに急に現れたのが、初の東南アジアの言語、タイ語だ。
なぜタイ語なのか。理由は、自粛期間中にインターネットの海を泳いでいて見つけた「タイドラマ」だ。
いまじわじわとブームが日本にも届いていて、日本語字幕が付いているドラマも少なくない。
版権がすでに購入され、日本の衛星放送で放送が決定したドラマもあるくらいだ。
つまり、タイドラマに見事にはまったので、少しでも原語で理解したくて勉強を始めた、という非常にちょろい理由だ。
おととしタイ出張があったが、その時は微塵も興味がなかったはずなのに。本当に何があるのかわからない。
で、今回取り上げたいのは、タイドラマでも、タイ語でもない。
この動画のサムネイル、おそらくラテン文字部分は読める人が多いだろう。
555の部分はタイ語で5の発音がhâaなので、要するに日本でいう(笑)のようなもの。ファイズでもないし、ジョジョでもない。
それ以外の部分、きっと読めないと思う。これがタイ語で使用される文字、タイ文字だ。
言語が変わると、表記も変わる(ことがある)。
日本語を読み書きする私たちは、漢字・平仮名・片仮名を使う。
義務教育では英語を勉強し、ラテン文字の書き方を学び、日本語の文章の中にも盛り込む。
日常で何気なく使う「文字」だが、私たちはいったいどれだけ「文字」について知っているのだろうか。
例えば、英語で使うラテン文字は今でこそ26文字だが、昔はもっとあった。

これらの文字の名前はなんなのか、おそらくすべてわかる人は少ないかと思う(※1)。
古英語、中英語では使われていたこれらの文字も、近代英語で次第に使われなくなっていき、今の形がある。
「英語で使うラテン文字」と書いたのが肝で、ラテン文字はその他にもたくさんある。
例えば、エスツェットはドイツ語でしか使わないし、ソーンはアイスランド語では現役だ。
なんかよくわからない記号(※2)がくっついた文字を含めると、「ラテン文字」と一口に言ってもその数は膨大になる。
「なんかよくわからない記号」をひっくるめて「発音区別符号(ダイアクリティカルマーク)」と呼んだりもする。
ラテン文字以外にも、文字はとにかくたくさんある。
キリル文字(ロシア語など)、ギリシア文字(ギリシャ語)、ハングル(韓国語)、
都知事の経歴うんぬんで話題の、アラビア文字(アラビア語など)あたりは有名どころだろう。
他にも、渦巻がかわいいシンハラ文字(シンハラ語※3)、

まるまる柔らかいグルジア文字(ジョージア語※4)、

宇宙的な無機質な印象のカナダ先住民文字(イヌクティトゥット語※5)、

文字なのか?という印象すらあるティファナグ(トゥアレグ語※6)など、世界には実にさまざまな種類の文字が存在する。

いま存在するものだけでも数々存在するが、もう使われない文字も数多く存在する。
ゲルマン諸語の古い文字形体であるルーン文字は、映画「ミッドサマー」でちょっと話題になった。
世界史の授業が懐かしくなるヒエログリフも、文字である。イースター島のロンゴロンゴ文字など、中には未解読のものも多い。
このようなすでに使われていない文字であったとしても、実は身近に存在することもある。
例えば、Bluetoothのロゴマーク、あれはルーン文字が由来だ。探せばもっと出てきそうだ。
想いを馳せれば馳せるほど、調べれば調べるほど、「文字」って奥深いなぁと感じる。
先人たちの知恵・努力に基づき、どうにかこうにか意思疎通を取ろうとして生まれた文字たち。
奥深いからこそ、たくさん覚えなくてはいけないことが多いのが、言語学習の辛いところでもある。
そんなこんな考えながら、「うーん、勉強するって決めたしなぁ…」と諦めつつ、
昔懐かしの漢字学習帳にタイ文字を書き連ねる日々だ。
文:中山(通称なかやん、ときどきひろさん、稀になかやまん)
(注釈)
※1 文字の名前(読み)は左から、アシュ(アメリカ英語catのaの音)、エズ(thの音)、エゼル(フランス語jeuneのeuの音)、ソーン(これもthの音)、ウィン(wの音)、ヨッホ(j/xの音)
※2 ウムラウト、アクサンテギュ、サーカムフレックス、チルダ、ハーチェク、セディーユ、などなど
※3 スリランカの公用語、実際にスリランカ人が書いているのを見たことがあるが、本当に渦巻をぐるぐる書いているように見えた。
※4 ジョージアの公用語、民族衣装がスターウォーズのジェダイの騎士みたいと話題になった国、ちなみにその臨時代理大使は筆者の大学の同級生(ちょっとだけ交友があった)
※5 イヌイットにより話される言語、この文字は近代以降に創出されたため、歴史は比較的浅め
※6 アルジェリアなどに居住するトゥアレグの人々が話す言語
(参考)
文字を特集した記事を色々探して読んでみるのも面白いのでオススメ
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